Archive for the ‘ソーシャルスキルトレーニング(SST)’ Category

【SST】友達と仲良くするためのルールを知り、守ることができる

2020-08-29

 本支援計画書では、はじめに、良い点、次に、改善しなければならない行動、続いて、ルール支配行動の定義、特徴及びルールの習得方法について述べていきます。

 まず、良い点についてお伝えします。明るく活発な性格で、様々な活動に積極的に取り組んでくれています。運動遊びでは、記録会でV字ドリブル100回や短縄の前跳び100回を合格することができました。また、反復横跳びでは、闇雲に動くのではなく、線を意識して動けるようになり、記録が28回から40回に伸びました。集団遊びでは、それぞれの遊びのルールを理解し、楽しむことができています。「鬼をやりたい」、「整列係をやりたい」、「あいさつ係をやりたい」等、本児童の元気の良さや積極性が良い面として現れています。

 次に、改善しなければならない行動について3点お伝えします。1点目は、思うようにいかないと友達を叩いたり蹴ったりし、力で解決しようとする点です。自分より年上の子に対しては行わず、自分より弱い立場の子に対して行っています。また、注意を受けると言い訳をし、素直に受け止めることができません。2点目は、ちょっとしたことで怒る点です。声を荒らげることで相手を怖がらせ、自分の思いを通そうとします。具体的には、ブロックで作った物がたまたま壊れてしまった時に近くにいた年下の子のせいにして怒り出します。また、ボール当てでは、自分専用のボールはありませんが、別の子が本児童の使っていたボールを使うと怒り出します。ジャンケンでどちらが使うか決めるよう促しても「自分が使っていた」と言い張り、聞く耳を持ちません。3点目は、嘘をつく点です。本児童には嘘をついている自覚はないようですが、友達からは嘘をついていると思われています。特に、自分のことを良く見せようとして嘘をつくことがよくあります。頻繁に嘘をついているので、友達に「また嘘じゃないの?」と言われてしまうほどになっています。これらの点を改善するため、応用行動分析学のルール支配行動を用いた支援をしていきます。

 続いて、ルール支配行動の定義、特徴及びルールの習得方法についてお伝えします。そもそもルール支配行動とは、実際に結果が出たり直接体験したりしていなくても行動随伴性を記述した言語によって制御される行動のことです。つまり、「歯磨きしないと虫歯になるよ」や「お手伝いしてくれたらお菓子を買ってあげるよ」等、「〇〇したら××という結果が生じる」という随伴性を伴う言葉によって未経験の状態でも制御される行動のことです。

 次に、ルール支配行動の数ある特徴の中から、本児童の支援に有効な5点をお伝えします。1点目は、随伴性形成行動に比べて行動を早く変容させることができる点です。随伴性形成行動は直接経験して行動を学習することに対し、ルール支配行動は直接経験していなくてもアドバイス等の言語刺激のみで行動を生起させることができます。2点目は、他者からの承認で強化される点です。例えば、友達と仲良くできた日に「よくルールを守れましたね、がんばりましたね」と承認する声掛けを行うと強化され、また同じ行動をとるようになります。3点目は、強化期間を限定すると価値が高まる点です。1日良い子で過ごせたらシールを貼り、シールがたまったら景品と交換できる現行のトークンのように、長い期間でフィードバックするよりも、1日の終わりに褒められたり、行動を抑えられる度に褒められたりする短い期間で行うフィードバックの方が好子の価値が高くなり、またその行動をとるようになります。4点目は、言語刺激との等価関係を形成すると好子の価値を高める点です。例えば「オーガニック」という言葉が「健康的」という言葉と結びつくように、ある言葉と別の言葉の等価関係が成立し、それが好子として機能すれば、確立操作としてその言葉の価値を高めることができます。本児童の成長に伴い効果的な言葉は変化する為、その都度、心に響く言葉を模索し提供していきます。5点目は、機能変容作用がある点です。これは、ルールに記述された刺激の機能がルールによって変容する作用のことです。例えば、「料理を取り出してください」という指示ならその言葉自体が弁別刺激ですが、「(電子レンジが)ピーッと鳴ったら料理を取り出してください」という指示になると「ピーッ」という音が料理を取り出す行動の弁別刺激に機能変容します。「ブロックを投げないと約束できるなら○○ができるよ」等、制御対象となる行動(ここではブロックを投げたり独り占めしたりすること)が自発される前に、ブロックで遊ぶ条件をポジティブな声掛けによるルールとして伝えることによって、その言葉が良い行動を強化する弁別刺激となります。つまり、事前に望ましい行動と本児童にとってプラスの意味合いをもつ行動とをセットにして伝えることで良い行動の促進効果が得られます。

 続いて、ルール支配行動を習得させる方法についてお伝えします。ルール支配行動は、随伴性の記述による行動を様々な場面で強化すること(般性オペラント)で習得されます。ルールは特定の言語刺激に対する特定の行動を引き起こすものではなく、何らかの共通特性をもった刺激が何らかの共通特性をもった行動を引き起こすことを意味しています。動作模倣を一つずつ多数教えていくと直接的学習歴のない行動が自発されることと同様、ルールも一つずつ多数教えていくことで、教えたことのないルールも守れるようになります。つまり、望ましい行動を本児童に一つずつ伝えていくことで、それらが本児童の中で関係づけられ、教えられていない望ましい行動が自発するようになっていきます。

 以上、良い点、改善しなければならない行動、ルール支配行動の定義、特徴及びルールの習得方法について述べました。本児童のとる言動に悪気があるわけではありませんが、友達とのトラブルが絶えず生じています。まだどのように振る舞えば友達と仲良くできるかを知らない為、一つずつルールとして伝え、より上手に友達と関わることができるよう支援していきます。

Juri, F.

【SST】ナラティブ・アプローチを通して、帰りの会の発表が上手にできるようになる

2020-07-15

 本支援計画書では、はじめに、良い点及び今後の課題、次に、運動遊びにおいて認知機能を要する運動の指標及び本児童の現状、続いて、想像力を生み出すナラティブ・アプローチについて述べていきます。

 まず、良い点及び今後の課題をお伝えします。明るく素直な性格で、様々な活動に一生懸命取り組む姿が印象的です。運動の面では、身体を動かすことが大好きで、楽しそうに取り組んでいます。記録会で繰り返し取り組んでいる短縄やドリブルが少し続けられるようになりました。マットの横跳びやお尻歩き等、あまり取り組んだことのない運動は「どうやって?」と尋ねてお手本を見せてもらい、動きを上手に真似してがんばっています。コミュニケーションの面では、お話することが好きで、車の中では指導員に積極的に話してくれます。また、友達に自分から呼び掛け、友達と一緒に遊ぶことが少しずつ増えています。公園でサッカーをしたり、教室で警察ごっこをしたりし、楽しそうに過ごしています。学習の面では、落ち着きがあり、集中して取り組むことができています。筆圧が強くなり、なぞり書きが上手にできるようになりました。また、自分の名前の一部や数字が一人で書けるようになり、がんばっています。今後の課題は、認知機能をさらに伸ばすことです。運動遊びの認知機能を要する運動があまりできなかったり、集団遊びのルールが分からなかったりします。また、話のまとまりがなかったり、聞かれたことに対して答えられなかったり、パターンが変わると何と答えればよいか分からなくなったりします。このような認知の弱さが見られますが、今後ナラティブ・アプローチを通じて、認知をさらに伸ばし、改善を図っていきます。

 次に、運動遊びにおいて認知機能を要する運動の指標及び本児童の現状についてお伝えします。運動遊びでは、単に身体を動かすだけでなく、記憶したり、ルールを理解したり、判断したりする等、認知機能を要する運動をたくさん取り入れています。それらの運動を簡単なものから難しいものへ15段階に設定した弊所独自の指標を以下に示します。なお、主に1段階から順にできるようになりますが、時にはできるようになる順番が入れ替わることもあります。


認知機能を要する運動指標


段階1 忍者ジャンプ

ポールを上で振ったらしゃがみ、下で振ったら跳ぶ遊び。


段階2 ビーチブラッグス

手を叩いたり音楽を止めたりする等のスタートの合図に素早く反応してカップを取りに行く遊び。


段階3 代わり鬼

タッチされたら鬼が代わる鬼ごっこ。


段階4 川渡りゲーム

川の中にいる鬼にタッチされないように川を渡る遊び。


段階5 名前呼んでパス

友達の好きなものを予め記憶し、「~の好きな○○君」と言いながらボールをパスする遊び。


段階6 宝取りゲーム

ペアの子と作戦を立てたり協力したりし、鬼にタッチされないように宝を取りに行く遊び。


段階7 ジグザグ駆けっこ

カップの外側を通ってジグザグに走る遊び。


段階8 お使いゲーム

頭文字を使って5つの動きを記憶し、その順番通りに行う遊び(精緻化リハーサル)。


段階9 ラダートレーニング

梯子状の道具を床に置き、指定された場所に足を置いてリズムよく進む遊び。


段階10 開いて閉じて閉じて

足3拍子、手2拍子の異なる動きを同時に行う遊び。10回で止める等の追加ルールがある場合もある。


段階11 足ジャンケン

「ジャンケンぽいぽい」の掛け声に合わせ、後出しジャンケンの要領で勝ちまたは負けになるように判断して足でジャンケンをする遊び。


段階12 猫とねずみ

猫とねずみに分かれ、「言われた方が追いかける」等の指示を聞いてから、「ねねね…ねずみ」といったスタートの合図を聞き、逃げるか追いかけるかを正しく判断して行う鬼ごっこ。


段階13 S字遊び

Sの字の上で行う鬼ごっこ。鬼はSの字の上しか通ることができないが、鬼以外はSの字の空いている2か所も通ることができる。


段階14 ひっつき鬼

鬼と逃げる子以外で3人1組の島を作り、逃げている子が島の端に座るとその反対側の子が逃げる子になる鬼ごっこ。


段階15 リズムジャンプ

前後左右4連続の指示を記憶し、その通りに跳ぶ。



本児童の現状は、3段階目の代わり鬼まで、声掛けがなくても一人で取り組んだり、ルールを理解した上で楽しんだりできるようになりました。しかし、4段階目以降は、参加しているものの、鬼にタッチされないように渡るというルールやワンバウンドでパスするという指示等を理解することが難しく、ルールに沿って行うことができていません。今後も言葉でのアドバイスだけでなく、お手本を示して実際に真似してもらうようにします。真似することが得意な本児童の強みを生かし、身体で動きを覚えてもらいます。その際、スモールステップでできる範囲を少しずつ広げていくとともに、即時フィードバックで意欲を維持すること、次の機会に良い気持ちで臨めるよう成功で終えることに留意していきます。認知機能を要する運動は、すぐにできるようになるものではありませんが、日々楽しく活動する中で一つでも多くの運動ができるように支援していきます。

 続いて、想像力を生み出すナラティブ・アプローチについてお伝えします。お話が上手になるためには、話を論理的に組み立てる力や想像力が大切です。これらの力を育むため、弊所では、帰りの会において学校で習ったことや初めて知ったこと、楽しかったことを発表する場を設けたり、新聞記事を使って項目特定処理を行い重要な点を見抜くクイズをしたりする等、ナラティブ・アプローチを実践しています。これから、ナラティブの6つの観点「①ブルーナーのナラティブに対する考え方、②ブルーナーが言語獲得プログラムについて主張したこと、③ナラティブの特性、④ブルーナーがストーリーの解釈を深化させたこと、⑤語ることと聞くことの関連について、⑥教育におけるナラティブ」を述べていきます。ブルーナーは、「可能世界の心理」において、論理-科学的思考様式とナラティブ的思考様式があることを指摘し、ナラティブ的思考様式の研究をした人です。1つ目の観点は、ブルーナーのナラティブに対する考え方です。ナラティブについてブルーナーは、「文法の形式を習得する根源であると主張し、我々が生活する世界はナラティブのルールとその骨組みによって構成されることを提案(今井康晴,2010)」しました。私たちは生活のあらゆる場面で他者との関わりをもち、ナラティブを通じて言葉の使い方や文法の形式を習得していきます。子どもたちは新しい知識に対して不完全な理解にとどまっていますが、内省的介入、つまり、その内容について大人と対話を交わすことによって不完全な知識がまとまりのある知識へと変わり、より深い理解につながります。2つ目の観点として、今井(2010)は、ブルーナーが言語獲得プログラムについて主張したことを以下のように述べています。


   ブルーナーは、子どもたちの興味や注意が行為により支配されているこ

   と、そして風変わりな事柄への注意を集中し、その情報を処理するレディ

   ネスが早くから備わっていること、時系列を標準化した形で保持するこ

   と、全体的な音声により見通しをもつこと、これらの能力が物語的道具の

   使用によって、早期に豊富な装備をもたらすことを確信した。したがって

   経験を物語ることによって言語獲得プログラムの優先性と特性を確固たる

   ものにすることは、幼児においても可能であり、幼児が言語以前の早期か

   ら物語的意味へのレディネスを備えていることを主張した。(p.53)


今井(2010)は、経験を物語ることによって言語獲得に必要な装備を幼児期から備えることができるとブルーナーが主張したと述べています。つまり、情報処理能力はナラティブにより身に付くと言えます。ナラティブによって、初めはバラバラに考えていたことが次第に時間的・因果的に結び付いたり、複数の情報から必要な情報だけを選び出したり、状況を読み取ったりする等、身の回りにあるたくさんの情報を適切に処理することができるようになります。3つ目の観点として、今井(2010)は、ナラティブの特性を以下のように述べています。


   ナラティブの特性は、獲得した言語の使い方や、共同体での生活に必要な

   対人交渉の学習を通して身に付けられるもので、物語的文脈における規範

   や通常からの逸脱を説明する時に物語的説明が活性化すると考察した。ま

   た、物語における心的表象形式としての言語は、他者の行為や表現によっ

   て、また人が相互に干渉する社会的文脈によって引き起こされる生得的な

   表象として捉えた。(p.53)


今井(2010)は、ナラティブは言語の使い方や対人交渉の学習を通して身に付けられると述べています。4つ目の観点として、今井(2010)は、ブルーナーがストーリーの解釈を深化させたことを以下に述べています。


   ナラティブ的解釈では、「話し手」が「聞き手」に対して「語る」という

   行為が、ある事象の解釈による意味形成の重要な手段となり、文化で生活

   する人間の行為を規定するものとして提案された。その様式は上述した二

   つの思考様式における論理科学的とナラティブの相互作用に認められる。

   そしてブルーナーは、ナラティブにおける個別のストーリー(法廷、文

   学、自己(自伝))の分析や解釈に関する考察で「二重の景観(dual

   landscape)」を挙げ、ストーリーの解釈を深化させた。それは、展開され

   るストーリーの中で、作り手からみた視点の景色、ストーリーの主人公か

   らみた景色、その他の登場人物からみた景色との複雑な絡み合いを通し

   て、新たな世界観や解釈を導き出されることを提案した。(p.55)


今井(2010)は、語る行為は事象の解釈に重要な手段であり、自分以外の立場から見た景色を知ることで新たな世界観や解釈を手に入れることができるとブルーナーが提案したと述べています。つまり、対話は、別の人の解釈に触れたり、一見無関係に見えることをつなぎ合わせ新たな意味を生み出したりする手段となり、対話をすることで他者の考え方を自分の既存の考え方に取り込み、新たな価値観や可能性を生み出していくことができると言えます。5つ目の観点は、語ることと聞くことの関連についてです。ブルーナーは、「科学を創造する過程の一つとしてナラティブを認識し、ナラティブに含まれる一連のストーリーは解釈の循環によって意味付けられることを主張した。そしてストーリーは説明されるものではなく解釈されるものとして扱い、ナラティブとストーリーの典型(今井,2010)」としました。語ることは人の話が理解できるようになることと言うことができます。語る時には、言いたいことの要点を選び、順序立てて話すために頭の中で整理することが必要になります。これができるようになると、人の話の要点も分かるようになり、話を聞いて理解することができるようになります。6つ目の観点は、教育におけるナラティブについてです。「教育におけるナラティブは、物語という表現形式で経験を表す能力として単純な子どもの遊びに留まるのではなく、文化の中で営まれる生活の大部分を支配する意味形成の手段として位置づけた(今井,2010)」とあることから、ナラティブは論理力を身に付けるだけでなく、ものの考え方・見方をも枠付けていくものと言えます。私たちは、ナラティブによって他者の考え方を取り入れて新たな視点から物事を考えられるようになり、社会的文脈によって形成され共有される意味を捉えることができるようになります。そして、ナラティブは自らの経験を枠付ける意味のまとまりとして機能し、私たちのその場の言動だけでなく、その先の言動をも方向づける重要な役割を果たします。ここまでナラティブの6つの観点を述べました。ナラティブは、日々の生活の中で様々な経験をし、その経験について対話することで身に付きます。帰りの会の発表において、本児童はまだこちらの意図を汲み取って答えることは難しいですが、心に残っていることを一生懸命話してくれます。新たなものの考え方や見方を獲得する一助となるよう、本児童の発表から伝えたかったことを汲み取り、新たな価値観を付加して言葉を返していきます。また、その他の場面でも出来事を共有して対話する機会を増やし、より上手に話すことができるよう支援していきます。

 以上、良い点及び今後の課題、運動遊びにおいて認知機能を要する運動の指標及び本児童の現状、想像力を生み出すナラティブ・アプローチについて述べました。ナラティブ・アプローチでは、新たに出会う知識に対する内省的介入を行うことで、新たな価値観や可能性を生み出すことができます。また、対話を通して、身の回りにある様々な情報を取捨選択したり、自己を取り巻く世界を捉えたりする力を身に付けることができます。その力は、未来の言動をも方向づける重要な役割を果たします。今後も、対話を通して様々な考え方を伝え、本児童がより楽しく過ごしながら、より成長できるよう支援していきます。


引用文献

今井康晴(2010).ブルーナーのナラティブ論に関する一考察.広島大学大学院教

   育学研究科紀要第一部学習開発関連領域.59.51-57.

Juri, F.

【SST】楽しい環境を通して成長を促す

2020-07-07

 本児童が通所し始めてから1年が経過しようとしています。ここまで様々な改善点が見られていますが、課題も未だ残されている状態です。本支援計画書では、はじめに最近の様子、次に自閉症児が学校で困り感を持つ理由とそれを改善する方法、続いて、ここまでに改善された点と今後の課題をお伝えします。

 最近の様子をお伝えします。6月から学校が始まったことによる環境の変化に伴い、少し落ち着きのない様子が見られています。新学期が始まり、新しい教室で、新しい先生、新しい友達と過ごすことになり、本児童を取り巻く物質的・人的環境が大きく変化しました。それにより不安定となった「環世界(Umwelt: Uexkull, & Kriszat, 1934)」(山内弥生・高橋登, 2013, p.118)が本児童にとって安定した環世界になるには、一定程度の時間経過が必要であると推測されます。不安定な時期は、一度できるようになったことができなくなってしまうこともありますが、成長過程の一つとして温かく見守っていきます。環世界の概念については「主体と環境が分離されるものではなく、主体は環境に常に包まれており、その環境自体が主体から見えて(あるいは感じられて)いるようなものとして存在していることをあらわす概念」と山内・高橋(2013)は述べています (p.118) 。 また、山内・高橋(2013)は 、自閉症児が学校で困り感を持つ理由を以下のように述べています。


   学校では、制度的な枠組みと子どもの障がいの双方のことから、自閉症児

   はさまざまな困難に直面せざるを得ない。学校で子ども達は集団の中で生

   活し、共通の目標の下で統一的な、つまり、みなが同じ行動を求められる

   ことが多い。他児との不断の関わりがあり、子どもは受動的に動くばかり

   でなく、能動的に対応することも求められる。また、他の児童との間で

   は、障がいに固有の仕方で独特な振る舞いをすることもあり、時には、そ

   れによって周囲の児童と同じ環境の中で活動できないことや、その行動が

   周囲を巻き込むトラブルに発展することもある。そうした点から、自閉症

   児の環世界は安定的なものとはなりにくい状況にあると考えられる。

   (p.118)


山内・高橋は、学校では自閉症児の環世界が安定的なものとなりにくい状況であることを説明しています。また、山内・高橋は「現在実践されている療育プログラムの多くは、それまでの行動療法的なアプローチとの対比から、発達的なアプローチ」であると紹介しています (p.117) 。そして、その内容は「コミュニケーションが自発的に促されるような環境ないし場面を用意し、子どもの方が相互行動を開始し、大人は子どものリードに従って、子どもの意図に反応し、子どもの行動を発展させるものとしてまとめること(Wetherby & Woods,2008)」と述べています (p.117) 。 この発達的アプローチは、私たちが実践する楽しい環境を提供することによって子どもの自発的な行動を促す療育方針と相通ずる内容です。引き続き本児童の成長を促進させるために発達的なアプローチを実践していきます。また、楽しい環境とは、本児童に合ったものでなければならず、本児童の気持ちを汲み取る努力をしていきます。

 続いて、ここまでに改善した点及び今後の課題をお伝えします。運動遊び・戸外活動・学習・帰りの会・自由遊びの5つの場面に分けてお伝えします。なお、同じ行動が複数の場面で見られることもあり、内容が重複している場合もあります。

 まず、運動遊びでの状態をお伝えします。運動遊びの始めと終わりの整列では、切り替えが苦手なこと・指示が聞こえていないことから、フラフラしていてなかなか自分の場所に並ぶことができませんでした。また、並んだ後に友達の背中をつつく等のちょっかいをかけることもよくありました。しかし、最近は並ぶまでの時間は掛かるものの友達にちょっかいをかけることはなくなり、整列係の指示に従えるようになりました。また、終わりの整列は比較的早く並ぶことができるようになっています。整列後のあいさつでは寝転がってしまうことが多く、よく声を掛けられています。以前は声を掛けられてもなかなか正すことができませんでしたが、最近はすぐに座ってくれるようになりました。あいさつをする係を頼まれた時は自ら正すことができています。実技に取り組む時間は、初めの頃はやりたがらず、寝転がったり立ち歩きをしたりして過ごしていました。しかし、取り組んでみると意外とできることに気付いて自信をもち、集団遊びや得意なことに積極的に取り組むようになりました。集団遊びでは、「鬼をやりたい」等の意思表示も自ら示すようになりました。その際、「ハイハイと言わず静かに座って待っていたら鬼になれるよ」等の声掛けにより、どうすればよいかを理解し、行動に移すことができるようになりました。まだ足じゃんけんや短縄等、得意でない種目はあまり取り組もうとしませんが、全体的に参加の機会は増えています。他の子が取り組んでいる時に座って待つことは依然として難しく、自分の番でない時は寝転がっています。しかし、「座っていたら(次の運動が)できるよ」と前向きな声掛けを行うと、運動の好きな本児童は素直に聞き入れ、短時間であれば座って待つことができるようになりました。まだ長続きはしませんが、「やりたい」という前向きな気持ちが適切な行動に結びついている一例です。集団遊びで負けてしまった時は悔しくて涙を浮かべながら「〇〇は悪い子だ」と言って別の部屋へ行ってしまうことがあり、気持ちを切り替えるまでに時間がかかっていました。しかし、最近は、不適切な発言は出てしまいますが、別の部屋へ行こうとした時に席に戻るよう声を掛けると、自分の席へ戻ることができるようになりました。運動遊びは本児童が好きな活動であり、前向きに取り組むことができています。多少課題は残っているものの、全体的に改善傾向にあります。

 次に、戸外活動での状態をお伝えします。戸外活動では、興味をひかれるとペアの子をおいて一人で別の所へ行ってしまったり、遊具のない広場では遊べずベンチにずっと座っていたりすることがありました。しかし、ペア活動に取り組む中で、「〇〇ちゃん、あっち行こう」等の呼び掛けができるようになり、一人でどこかへ行ってしまうことはなくなりました。また、指導員が見守る中で友達と関わる機会を設定したことで、友達と仲良くするためにルールを守ることを覚えたり、友達と一緒に遊ぶことの楽しさを感じたりできるようになりました。友達との関わりを自ら求めるようになってから、遊具のない広場でも鬼ごっこや野球、サッカーをして楽しそうに過ごすことが増えました。戸外活動では、ペア活動により指導員が仲介しながら友達と関わる機会を設けてきたことから、友達との関わり方を覚え、ルールに沿って楽しく活動することができるようになりました。

 続いて、学習の時間での状態をお伝えします。学習はなかなか取り組む気になれず、始めるまでにとても時間がかかり、床に寝転がるといった逃避行動も見られます。また、私語が多く、友達に「静かにして」と言われる等、友達とトラブルになることがあります。宿題や公文をやるよう声を掛けると指導員に対し「お前がやれ」等の不適切発言をし、反抗的な態度を示します。休校期間中はその日の課題を終えられるようがんばる姿が見られましたが、休校明けは机に向かうことができず終わらないことが続きました。ここ数日は、始めるまでに時間はかかるものの、時間内に終えられるようになりました。一旦取り組み始めるとスムーズにできるので、いかにやる気になってもらうかが現在の課題です。

 続いて、帰りの会での状態をお伝えします。帰りの会では、初めて知ったことや楽しかったことの発表をしてもらっています。初めは「言えない」と言うことがよくありましたが、経験を重ねるうちに「いつ」「どこで」「何をした」という型に沿って上手に言うことができるようになりました。他の子の発表中に寝転がって聞いていないときもありますが、ルールを伝えると、短時間であれば意識して抑えることができています。まだ長続きはしませんが、本児童も得意な活動として認識しており、言いたいという気持ちがあることから、ルールを守ることにつながっています。運動遊びと同様、発表もがんばろうという意欲が感じられ、良い傾向にあります。

 最後に、自由遊びでの状態をお伝えします。通所し始めた頃は、一人で遊んでいました。次第に、指導員と関わるようになりました。そして、指導員とのメリーゴーランドやお馬さん、ロボット(指導員の足の上に本児童に立ってもらい、一緒に歩く)といった触れ合う遊びを気に入るようになり、本児童から「やってやって」「もう一回」と言いに来てくれるようになりました。この頃から、私たちとの関わりは楽しいものだという認識ができてきたと推察されます。友達との関わりは、初めは友達の作った物を壊す等の不適切な行動がよく見られました。謝るよう促しても謝ることもできませんでした。次第に、同学年の友達に本児童がちょっかいをかけにいくと、その子が相手になってくれるようになり、仲良くなりました。とても気の合う友達で、いつも一緒に遊んでいました。休校期間中には、年上の友達の名前をたくさん呼んで慕うようになり、ボール当てやじゃれ合い等をし、だんだん誰とでも仲良くできるようになりました。今では、不適切な行動で気を引こうとすることはなくなり、上手に関われるようになりました。また、友達に話しかける時に、友達の目をチラッと見る等、相手のことを意識できるようにもなりました。コミュニケーションの面では、本児童から指導員に話しかけてきてくれたり、友達に「ねぇ、見て」と作った物を見せに行ったりする等、積極的になりました。最近は、誕生日のこと等、自分のことを話してくれることも出てきています。自由遊びの場面では、友達との関わりを通して、相手を意識したり楽しさを共有したりする行動がとれるようになり、大きく改善しました。

 以上、これまでの様子を振り返ると、多くの点で成長したことが分かります。今後も楽しい環境を提供するとともに、本児童の特性を考慮し、本児童を取り巻く環世界が安定したものとなるようサポートしていきます。


引用文献

山内弥生・高橋登(2013).小学校入学にともなう自閉症児の学校環境への移行過

   程―短期縦断的分析―.大阪教育大学紀要第Ⅳ部門教育科学.62.117-

   132.

Juri, F.

【SST】言葉の表出がよりスムーズにできるようになる

2020-05-12

 明るく素直で優しく、友達とトラブルになることなく、仲良く過ごすことができています。鬼ごっこやサッカー、ボール当て等、ダイナミックに身体を動かして遊ぶことが大好きです。お絵描きをしたり折り紙で遊んだりすることも好きで、作品をきっちりと丁寧に仕上げることに本児童の繊細さが感じられます。また、ルールに対する意識が高く、自分がそのルールを守るだけでなく、友達にも「〇〇しちゃダメだよ」と柔らかな口調で教えてあげています。運動遊びでは、どの種目も一生懸命取り組み、がんばっています。握力が強いこと、体重のかけ方が上手なことから、綱引きがとても強いです。跳び箱では、怖がらずに勢いをつけられるようになり、縦5段を上手に跳び越えられるようになりました。縄跳びでは、交差跳びがたくさん跳べるようになり、二重跳びも1回跳べるようになりました。集団遊びでは、ルールに沿って積極的に参加し、楽しんでいます。学習の面では、公文・レプトンをがんばっています。公文では、理解力があり、新しい内容もすぐに自分でできるようになります。また、1問ずつ丁寧に取り組むことができるので、計算ミスもあまりありません。レプトンでは、アルファベットそれぞれの文字の音が分かるようになってきて、一人で読める単語が増えました。また、英単語を書くこともスムーズにできるようになり、がんばっています。気になる点は言葉の表出や算数の文章題、国語の読解問題が苦手な点です。以下の取り組みを通じて、気になる点の改善を図っていきます。

 「三宅ら(2002)は、発達障害幼児に情動的交流遊びを中心にしたコミュニケーション指導を行い、指導者と子どもとの間に情動の共有が成立するにしたがい、社会的相互作用の水準、要求の伝達手段、模倣のすべてにおいて向上を示し、コミュニケーション行動の発達が認められた」と、人間関係を重視した言語指導法で報告しています。弊所でも戸外活動や運動遊び、自由遊び等、様々な場面で、鬼ごっこやドッジボール、メリーゴーランドなど、楽しいと感じる情動的交流遊びをよく行っています。遊びの中で楽しさや面白さを共有し、本児童との心の距離が縮まったことに伴い、自然発生的な言葉のやりとりも増えてきています。実際に、本児童から話しかけてきてくれたり、質問したことに対して「分からない」と言うことがほぼなくなり会話が少し続くようになったり、帰りの会の発表が以前に比べてスムーズにできるようになったりし、コミュニケーション力が向上してきている実感があります。また、ここ最近は、Show & Tellに挑戦し、家で作ってきた物を見せながら、発表をしてくれます。まだあまり慣れていないので、質問に対して一言答えることが精一杯ですが、このような機会を提供して繰り返し挑戦してもらい、発表することに慣れてもらいます。今後もこれまでと同様、様々な遊びを通して本児童との関係を深めたり、発表の機会を提供したりしてコミュニケーション力を伸ばし、言葉の表出がスムーズにできるようにしていきます。

 算数の文章題に関しては、苦手意識があり、あまり考えずに出てきた数字を順番に使ってしまう傾向があります。具体的には、「1つ9円のあめを5個買います。代金はいくらですか。」という問題に対し、「1×9=9」という式を立ててしまいます。まずは、問題の内容を絵に表し、内容をイメージ化する練習をしていきます。初めのうちは、一緒に解きながら「あめはいくらだった?」「いくつ買うの?」等と質問して答えてもらい、絵に表す方法を覚えてもらいます。できるようになってきたら、問題文を一人で読んで絵の穴埋めをすることに移行していきます。そして、徐々に手助けを減らし、最終的には、自分で読んで自分で絵に表すことができるようにし、一人で問題を解けるようにしていきます。

 国語の読解問題が苦手な理由を知るため、事前に読む力や内容の理解力があるかどうか別々に確認してみました。本を読む時に読みとばしたり逐次読みしたりすることはなく、スラスラと読むことができたことから、読む力に問題は見られません。また、運動遊びで説明や指示を出した時にその通りに動くことができていることから、話を聞くことに困っている様子は見られず、話を聞いて理解する力にも問題は感じられません。読む力も内容を理解する力もあることから考えると、読解問題や文章題が苦手な理由は読むこと及び内容を理解することの二点を同時に行わなければならないことにあるのではないかと考えられます。また、「場面や状況の推移、対人関係の枠組み、ストーリーの展開等の幅広い文脈の中で、言葉を理解したり使用したりする技能(島田,2008)」である語用能力に弱さがあることが言葉の表出が苦手な点にも通じていると考えられます。そこで、以下の知見を参考にして実践を行い、気になる点の改善を図っていきます。

 「児童・生徒が示す語用能力の問題は、認知的な関係処理機能に不全が生じたために、文脈が内包する多様な関係情報の符号化が困難になり、文脈に即した言語活動を行うことが難しくなった状態とみなすことができる(島田,2008)」「項目特定処理を中心にした指導を継続的に実施すれば、事例が生来的に有している関係処理機能の弱さに負担をかけず、効率的に指導を進めてゆくことができるため、結果的には意味処理の深まりが関係処理機能の改善に有効な作用を及ぼすことが分かった。関係処理と項目特定処理は意味処理の両翼を担う根源的な認知機能であるため、児童にとって使いやすい項目特定処理機能を用いれば深い意味処理が可能となる。さらに、意味処理の深まりは事象間の関係性への気づきを促すため、関係処理機能の改善が生じてくるのだと結論することができるのである(島田,2008)」と報告されています。

 弊所では、運動遊びの始めの時間を利用して以下の実践を行い、語用能力を改善させていきます。まず、短い話を読んでもらい、項目特定処理をしてもらいます。登場人物はどんな気持ちだったか、自分だったらどうするか等を質問し、書かれていた内容について自分なりに意味づけをしてもらいます。項目特定処理を繰り返し行うことで、文を読みながら文意を読み取る力を伸ばしていきます。さらに、この実践を通して語用能力が伸びてくると、日常生活の場面においても相手の気持ちを察したり、その場の雰囲気や状況を読み取ったりする力も伸び、コミュニケーション力も向上していくと考えられます。日常生活において言葉の表出がよりスムーズにできるようになることを目標とし、まずは項目特定処理を通じて語用能力の向上を図っていきます。


引用文献

大島光代・都築繁幸(2014).発達障害児の言語・コミュニケーション指導の研

    究動向に関する一考察,教科開発学論集,2,211-220.

島田泰仁(2008).言葉の表現が困難な児童の関係処理と項目特定処理機能に関

    する指導事例,鳴門教育大学研究紀要,23,155-166.

Juri, F.

【SST】感情をコントロールし、穏やかに過ごせる日を増やす

2020-04-17

 明るく素直な性格で、がんばり屋さんな所がたくさん見られます。また、言葉の端々に優しさが感じられることが多く、本児童のお話を聞いていると、ほんわかとした気持ちになります。自由遊びの時間は、ブロックで遊ぶことが好きで、ロボットをよく作っています。作り終わると誇らしげな顔をして、気に入っている部分や工夫した部分の説明をしてくれます。運動遊びでは、どの種目も一生懸命取り組み、がんばっています。記録会では、長縄の回旋ジャンプ100回やドリブル100回を合格し、とても喜んでいました。集団遊びでは、積極的に取り組み、楽しそうに活動しています。学習の面では、切り替えが早く、集中して取り組むことができています。公文をがんばっていて、わり算の筆算ができるようになりました。内容が少しずつ難しくなってきましたが、新しいことができるようになるのがとても嬉しいようで、前向きに取り組んでくれています。戸外活動では、ペアを意識して行動することができるようになりました。また、友達と交互に遊ぶ場所を決めることができるようになり、あまり仲介をしなくても、仲良く過ごせるようになってきました。今後も、本児童の良い面をさらに伸ばすことができるよう努めていきます。

 気になる点は、学習の時間に公文の直しが思い通りにいかないと感情が高ぶってしまう点、おもちゃを取られそうになったり、友達の行動が気になったりすると、怒鳴ったり、強めの言葉を使ったりする点です。この点を改善するため、ヴィゴツキーのZPD理論に基づいて支援を行い、穏やかに過ごせる日を増やしていきます。

 ロシアの心理学者、ヴィゴツキーは、最近接発達領域(ZPD)について、「『教育学は、子どもの発達の昨日にではなく明日を目指さなければならない。そのときにのみ、教育学は、最近接発達領域のなかでいま横たわっている発達過程を、教授―学習過程のなかで呼び起こしうるのである』[1982, c.251]。『未成熟の領域は、しかしながら、成熟しつつある過程の領域であり、子どもの最近接発達領域を成します』[1984a, c.264](堀村,2013)」と述べています。また、Schneuwlyは、「最近接発達領域の概念は、個人の内的可能性と外的要求との矛盾の働きを理解する理論上の試みである(岡花,2009)」と指摘しています。最近接発達領域理論の解釈をめぐっては、様々な議論が行われてきましたが、ブルーナーがその議論を一歩進め、「足場かけ(Scaffolding)」という概念を提唱しました。「学習者の周りにいる援助者が、課題解決のモデルを示したり、課題解決のために注目すべき特徴を示したりすることによって、子どもはひとりで解決できない、より高次の課題を遂行できるということを指摘した。このような最近接発達領域における援助のあり方を、「足場かけ」と論じたのである(岡花,2009)」と述べられています。本児童が公文の直しで感情が高ぶってしまう理由としては、遊びたい気持ちが強いため焦って分からなくなってしまうこと、できない・分からない時の感情の処理の仕方が上手ではないため過剰に自分を責めてしまうことが考えられます。まず、学習時に感情が高ぶることを減らすため、以下に示す4つの段階に分けて支援を行っていきます。第一段階は、直しに対する嫌なイメージを減らす段階です。指導員が問題を解く所を隣で見ていてもらい、さっと終えられるようにします。第二段階は、指導員と一緒に問題を解く段階です。指導員の出すヒントをもとに、自分で計算してもらいます。第三段階は、間違っている部分を明確に示してもらい、自分で解き直す段階です。どこが間違っているかを考える負担を減らし、取り組みやすくします。第四段階は、一人で解く段階です。間違っている部分を自分で見つけ、訂正することができるようにします。第一段階から第四段階へ徐々に移行し、支援の度合いを少しずつ減らしていきます。一人でできる第四段階を目指し、まずは、第一段階から始めていきます。その際、本児童自身が『足場』を見つけ出し、創造していく過程を見落とすことがないよう配慮します。また、段階が上がった時に上手くいかない場合は、一旦元の段階に戻る等、柔軟に対応し、落ち着いて穏やかに取り組むことができるようにしていきます。

 また、ヴィゴツキーは「子どもの発達における遊びとその役割」において、次のように述べています。「就学前期の子どもは、日常生活においてルールに従えなくても、遊びのなかでは喜びをもってルール(役割)に従うという[cf.2005, c.209]。ここにはルールを楽しみ、喜びとする子どもの心理がある。ルールの認識と喜びの情動は同時に成立しているのである[cf.2005, c 216]。しかし、二歳児ではどうだろう。二歳児は目の前にあるキャンディーを、遊びのルールに従って扱うことをせず、衝動的満足に従って食べてしまうだろう。就学前期の子どもは、眼の前のキャンディーをもちろん食べたいが、二歳児のように衝動的満足にしたがうよりも、遊びのルールの下でそれを扱うことの方により大きな喜びを見出すのである(堀村,2013)」。遊びの中では喜びをもってルールに従うということから、遊びの中でルールを学ぶことができるということが言えます。これまでに、運動遊びで「負けても泣かない・怒らない・途中で止めない」というルール、戸外活動で「ペアを守る」というルールを導入してきましたが、ルールをしっかりと意識して守ることができており、改善の様子が見られています。また、「遊びは子どもの最近接発達領域を産出する。遊びの中で子どもはいつも、自分の平均年齢期よりも上位におり、自分の普段の日常的行為よりも上位にいる。[2005, c.220]このことから、遊びのなかで喜びの情動が増大するという力動的過程は、ZPDと同義的であるとみなすことができる。そしてそれは『成熟しつつある』という過程の内容を表していると考えることができるのである(堀村,2013)」とあることから、遊び自体が本児童の情緒の発達に良い影響を与えていると考えられます。今後も、自由遊び、運動遊び、戸外活動等、様々な遊びを通して、情緒の発達を促していきます。

 思い通りにならないことがあると怒鳴る点に関しては、行動分析的アプローチによる支援も行っていきます。本児童のこの行動は特定の友達に対して生じることが多く、その時の感情の度合いによって、問題行動が起こる場合とそうでない場合があります。問題行動を起こさず我慢できることもあることから、行動のレパートリーはもっているので、以下の支援を行い、気になる行動を減らしていきます。まず、「思い通りにならなかったり、嫌な思いをしたりしても怒鳴らない」等、行動の重要性を言語化し、予めルールとして伝えます。また、我慢できなくなりそうな時や自分で解決できない時は大人に頼るようにしてもらいます。大人が仲介することで、それぞれの場面の対処方法や考え方を覚えてもらい、徐々に自分で対処できるようにしていきます。また、声がいつもより大きくなる等、様子が怪しくなってきた時には、声掛けによる補助刺激を付加し、未然に対応できるようにします。怒鳴ることを我慢できたり、別の方法で回避できたりした場合にはほめ、好ましい行動を強化していきます。

 本児童は学習力があり、ルールを守ろうという意識も強いです。本児童がより過ごしやすくなるよう配慮し、友達と仲良く穏やかに過ごせるようにしていきます。


引用文献

岡花祈一郎・多田幸子・浅川淳司・杉村伸一郎(2009).幼年教育研究年報.31

    131-137.

堀村志をり(2013).最近接発達領域は「可能性の領域」か:発達の力動の観点か

    らの考察.研究室紀要.39.43-52.

Juri, F.

【SST】その場にふさわしい態度を知り、振る舞い方を覚える

2020-01-27

 明るく前向きな性格で、運動も学習も意欲的に取り組んでいます。運動の面では、マットの前転でスムーズに起き上がれるようになったり、長縄の回旋ジャンプで縄のタイミングに合わせたジャンプが長く続けられるようになったりしています。集団遊びでは、楽しくて気分が盛り上がる中でも安全面のルールをしっかりと意識した上で活動できるようになってきました。今後も安全面に気をつけながら楽しく身体を動かしてもらいます。学習の面では、前向きに取り組み、がんばっています。公文では、内容が少しずつ難しくなってきましたが、繰り返し練習し、一人で解けるようになっています。レプトンでは、新しい単語や会話文を覚えるのが得意で、スイスイと進んでいます。書くことにも取り組み、アルファベットの大文字・小文字が全て書けるようになったり、ローマ字や発音をもとに単語や文が書けるようになったりしています。記憶力が優れていて、新しいことをどんどん吸収することができ、がんばっています。今後も公文・レプトンを通して、計算力・英語力をさらに伸ばせるよう支援していきます。
 少し気になる点は、その場にふさわしい態度をとることができない点です。整列する時や体操隊形に開いた時に友達といつまでも話していたり、戸外活動の移動時に後ろを向いて友達と話しながら歩いたり、お片付けの時間に何もせずフラフラしていたりします。これまでたくさん声を掛けてきましたが、その場では素直に応じるものの根本的に行動が変わらず同じ注意を何度も受けていることから、その場面でどう振る舞えば良いかを知らない可能性があります。そこで、その場にふさわしい態度を身に付けてもらうことを目標とした支援を行っていきます。そもそも態度とは、決心し行動に移すこととR. M. Gagneは述べています。ある態度を身に付けたと判断される基準はその行動が自発されることで、そうしようと思っているだけで行動が伴わない場合や指示を受けてそれに従う場合はその態度を身に付けたとは言えません。また、「正統的周辺参加において、学習とは参加である。(中略)学習とは、従来考えられてきたような個人による知識や技能の獲得など個人の中で起こっている認識論的な問題ではなく、社会的世界やネットワークといったものと切り離して考えることはできないものだ。更に、参加の度合いの増大にともなって、その共同体における学習者のアイデンティティが他の成員との相互交渉によって確立されていく(遠藤,2005)」とあります。つまり、学習は個人で行われるものではなく、ある集団に属し、その集団の中にいる人とのやり取りを通して生じるとされていて、集団に参加するという文脈の中で自分の居場所を知り、自分が何をすべきか、どう振る舞うべきかが次第に分かるようになるということです。教室では、この場面でこうすべきというルールが決められていますが、先に述べたように本人はまだルールに沿えていないことがよくあります。本人に、他の子とは異なる自分の行動に気付いてもらうため、すべきことを視覚化して自覚を促すとともに、その成果をトークンと連動させ、自発的にふさわしい態度をとることができるようにしていきます。また、「○○君、〇〇してね」と単に指示を出すのではなく、「○○君」で止め、その後に何を言おうとしたか本人に考えてもらう機会を作ります。ただ言われたから直すのではなく、今何をすべきか自分で考え言語化してもらうことで、自分でその場に合った行動を選択し実行する力を育んでいきます。


引用文献

遠藤ゆう子(2005).『状況に埋め込まれた学習正統的周辺参加』を読む―学

    習と学習環境デザインを考える―,言語文化教育研究,3,226-236.

Juri, F.

【SST】落ち着いて座ることができるようになる

2020-01-26

 昼食時に意味もなく急に立ち上がったり、座っている時にそわそわしていたりする等、あまり物事に集中できず落ち着きがありません。現在の症状を改善させるためには、一般的に運動が良いと言われていますが、今回は以下の知見を参考にして前頭葉機能を向上させ、症状の改善を図っていきます。
 「難しいバランスコントロールを要する(中略)遊び経験と前頭葉機能には正相関がある(志村・有村,2005)」という知見から、バランスをとる遊びを通して前頭葉機能を向上させていきます。最初は片足立ちや平均台、バランスボール、一本橋クマ歩き等、簡単なものから始め徐々に難易度を上げていきます。また、現時点では、ラダートレーニングのうち、右足→左足→左足→右足という順に足を前に出して進むような、日常の動きと異なり歩くバランスを崩すような動きが苦手です。初めはゆっくりと確実に行うことを意識してもらい、徐々にスピードを上げていけるよう練習していきます。
 「握力と前頭葉機能との関連性は(中略)認められている(志村・有村,2006)」、「握力が育つような経験が脳機能をも育てる可能性が考えられる(志村等,2008)」という知見から、遊びの中に握力を鍛える要素を取り入れていきます。運動遊びでは、綱引きや大根引っこ抜き、鉄棒のぶら下がり、レスキュー隊等、ギュッと握る動作のある遊びがたくさんあります。友達と勝負したり、ミッションを作ったり、ストーリー性のあるものにしたりする等、より楽しく活動できるよう工夫していきます。また、戸外活動では、公園に出かけた際、本人の好きなターザンロープや雲梯等で楽しく遊んでもらう中で、自然に握る動作を増やしていきます。好きな遊びは何度も繰り返し取り組むので、より効果があると考えられます。
 「屋外での遊び経験が豊かであると、筋力(握力)や瞬発力、巧緻性が高い関係が読み取れた(志村等,2008)」、「体を使った屋外での遊び経験は前頭葉機能とも、運動能力とも正の関連を示す傾向にあった(志村等,2008)」という知見から、戸外活動で公園遊びを積極的に取り入れていきます。友達とかけっこや鬼ごっこをする等、広い場所で思いっきり走ること、様々な種類の遊具に挑戦すること等、公園ならではの良さを生かしながら、楽しく身体を動かす経験を積み重ねてもらいます。
 これらの実践を行う際は、本人が楽しい、もっとやりたいと感じるよう配慮していきます。また、ほめてやる気を引き出しながら成長を促していきます。


引用文献

志村正子・原田直子・平川慎二・有村映子・北川淳一・山中隆夫・野井真吾

    (2008).幼稚園児における運動・遊び経験と運動能力および前頭葉機能

    との関連 性―横断的検討ならびに遊びによる介入―,発育発達研究,

    37, 25-37.

Juri, F.

【SST】相手に伝わるように話すことができる

2020-01-25

 お話することが好きで、色々なことを話してくれますが、発音が少し不明瞭で聞き取りづらく、内容が分からないことがあります。まだ利用回数が少なく、本人のことを十分に知っているとはいえないので、まずは遊びを通して距離を縮めていきます。また、戸外活動等で一緒に遊ぶ中で楽しさを共有し、共通の話題をもてるようにします。共通の話題であれば、話の内容をイメージしやすく、多少聞き取りづらい部分があっても「〇〇のことかな?」と確認することができ、話を完結させることができます。また、会話中に本人の話したことをそのまま返すことで「きちんと伝わっているよ」というメッセージを伝え、安心感をもってもらえるようにしていきます(オウム返しの傾聴技法)。

Juri, F.

【SST】独り言を減らす

2020-01-24

 通所し始めてから半年程経ち、教室での活動やルールにも慣れ、落ち着いて過ごせるようになりました。最近は、友達への興味が出てきて、少しずつ関わりが増えてきています。自由遊びの時間に、友達がしている遊びに加わって仲良く遊んだり、戸外活動でペアの子を意識して行動したりすることができるようになりました。今後も戸外活動等、指導員が見守る中で友達と一緒に楽しく遊ぶ経験を積み重ねてもらい、さらに友達との関係が深まっていくよう支援していきます。
 コミュニケーションの面では、独り言が多いことが気になっています。学習の時間や帰りの会のような静かにしていないといけない場面、昼食時や移動時のような話してもよい場面に分けて対応を変え、独り言を減らしていきます。静かにすべき場面では、独り言を言わないことをルールとして予め伝えておきます。「友達が学習に集中できないから」、「友達の発表が聞こえないから」等、静かさを保つ行動の重要性を言語化し、ルールを守ろうという意識につなげていきます。また、「今から皆の発表が終わるまで」等と静かにする時間を明確に示して取り組みやすくしたり、途中で「独り言言ってない?」と確認する等、補助刺激を加えて再び意識を高めたりし、成功体験を積み重ねられるようにしていきます。また、できた時には「静かにできていたよ」「ルールを守れたね」と伝え、次もそうしようと思ってもらえるようにします。話してもよい場面では、非両立行動分化強化にて、独り言から会話へ行動を変容させていきます。独り言を言い始めた時に何か話を振って話し相手になり会話を続けます。好きなアニメや恐竜、遊びのこと等、本人の興味に合わせて話を振るよう配慮し、独り言を減らすだけでなく、人との会話の楽しさを感じてもらえるようにします。

Juri, F.

【SST】名前を呼ばれたら返事をして相手の話を聞くことができる

2020-01-24

 戸外活動等で遊びに夢中になっていると指示に対して反応が無いことがよくあります。肩をトントンとして注意を引いてから指示を出すと素直に応じてくれることから、指示そのものが耳に入っていないように思います。まずは、楽しい環境を提供し、人との関わりの楽しさを感じてもらいます。友達や指導員と一緒に遊ぶ機会を増やし、相手に意識を向けられるようにしていきます。また、名前を呼ばれたら必ず返事をすることをルールとして予め伝えておきます。初めのうちはすぐに反応しないことも多いと思いますが、繰り返し呼んだり、ルールを再確認したりして名前を呼ばれたら返事をすることを習慣化していきます。すぐに反応できた場合にはほめ、次もそうしようと思ってもらえるようにします。また、話を聞くと良いことがある経験、人と関わる楽しさを感じられる経験を繰り返し、呼び掛けに反応しようとする意識を高めていきます。

Juri, F.

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