7月, 2020年

【SST】ナラティブ・アプローチを通して、帰りの会の発表が上手にできるようになる

2020-07-15

 本支援計画書では、はじめに、良い点及び今後の課題、次に、運動遊びにおいて認知機能を要する運動の指標及び本児童の現状、続いて、想像力を生み出すナラティブ・アプローチについて述べていきます。

 まず、良い点及び今後の課題をお伝えします。明るく素直な性格で、様々な活動に一生懸命取り組む姿が印象的です。運動の面では、身体を動かすことが大好きで、楽しそうに取り組んでいます。記録会で繰り返し取り組んでいる短縄やドリブルが少し続けられるようになりました。マットの横跳びやお尻歩き等、あまり取り組んだことのない運動は「どうやって?」と尋ねてお手本を見せてもらい、動きを上手に真似してがんばっています。コミュニケーションの面では、お話することが好きで、車の中では指導員に積極的に話してくれます。また、友達に自分から呼び掛け、友達と一緒に遊ぶことが少しずつ増えています。公園でサッカーをしたり、教室で警察ごっこをしたりし、楽しそうに過ごしています。学習の面では、落ち着きがあり、集中して取り組むことができています。筆圧が強くなり、なぞり書きが上手にできるようになりました。また、自分の名前の一部や数字が一人で書けるようになり、がんばっています。今後の課題は、認知機能をさらに伸ばすことです。運動遊びの認知機能を要する運動があまりできなかったり、集団遊びのルールが分からなかったりします。また、話のまとまりがなかったり、聞かれたことに対して答えられなかったり、パターンが変わると何と答えればよいか分からなくなったりします。このような認知の弱さが見られますが、今後ナラティブ・アプローチを通じて、認知をさらに伸ばし、改善を図っていきます。

 次に、運動遊びにおいて認知機能を要する運動の指標及び本児童の現状についてお伝えします。運動遊びでは、単に身体を動かすだけでなく、記憶したり、ルールを理解したり、判断したりする等、認知機能を要する運動をたくさん取り入れています。それらの運動を簡単なものから難しいものへ15段階に設定した弊所独自の指標を以下に示します。なお、主に1段階から順にできるようになりますが、時にはできるようになる順番が入れ替わることもあります。


認知機能を要する運動指標


段階1 忍者ジャンプ

ポールを上で振ったらしゃがみ、下で振ったら跳ぶ遊び。


段階2 ビーチブラッグス

手を叩いたり音楽を止めたりする等のスタートの合図に素早く反応してカップを取りに行く遊び。


段階3 代わり鬼

タッチされたら鬼が代わる鬼ごっこ。


段階4 川渡りゲーム

川の中にいる鬼にタッチされないように川を渡る遊び。


段階5 名前呼んでパス

友達の好きなものを予め記憶し、「~の好きな○○君」と言いながらボールをパスする遊び。


段階6 宝取りゲーム

ペアの子と作戦を立てたり協力したりし、鬼にタッチされないように宝を取りに行く遊び。


段階7 ジグザグ駆けっこ

カップの外側を通ってジグザグに走る遊び。


段階8 お使いゲーム

頭文字を使って5つの動きを記憶し、その順番通りに行う遊び(精緻化リハーサル)。


段階9 ラダートレーニング

梯子状の道具を床に置き、指定された場所に足を置いてリズムよく進む遊び。


段階10 開いて閉じて閉じて

足3拍子、手2拍子の異なる動きを同時に行う遊び。10回で止める等の追加ルールがある場合もある。


段階11 足ジャンケン

「ジャンケンぽいぽい」の掛け声に合わせ、後出しジャンケンの要領で勝ちまたは負けになるように判断して足でジャンケンをする遊び。


段階12 猫とねずみ

猫とねずみに分かれ、「言われた方が追いかける」等の指示を聞いてから、「ねねね…ねずみ」といったスタートの合図を聞き、逃げるか追いかけるかを正しく判断して行う鬼ごっこ。


段階13 S字遊び

Sの字の上で行う鬼ごっこ。鬼はSの字の上しか通ることができないが、鬼以外はSの字の空いている2か所も通ることができる。


段階14 ひっつき鬼

鬼と逃げる子以外で3人1組の島を作り、逃げている子が島の端に座るとその反対側の子が逃げる子になる鬼ごっこ。


段階15 リズムジャンプ

前後左右4連続の指示を記憶し、その通りに跳ぶ。



本児童の現状は、3段階目の代わり鬼まで、声掛けがなくても一人で取り組んだり、ルールを理解した上で楽しんだりできるようになりました。しかし、4段階目以降は、参加しているものの、鬼にタッチされないように渡るというルールやワンバウンドでパスするという指示等を理解することが難しく、ルールに沿って行うことができていません。今後も言葉でのアドバイスだけでなく、お手本を示して実際に真似してもらうようにします。真似することが得意な本児童の強みを生かし、身体で動きを覚えてもらいます。その際、スモールステップでできる範囲を少しずつ広げていくとともに、即時フィードバックで意欲を維持すること、次の機会に良い気持ちで臨めるよう成功で終えることに留意していきます。認知機能を要する運動は、すぐにできるようになるものではありませんが、日々楽しく活動する中で一つでも多くの運動ができるように支援していきます。

 続いて、想像力を生み出すナラティブ・アプローチについてお伝えします。お話が上手になるためには、話を論理的に組み立てる力や想像力が大切です。これらの力を育むため、弊所では、帰りの会において学校で習ったことや初めて知ったこと、楽しかったことを発表する場を設けたり、新聞記事を使って項目特定処理を行い重要な点を見抜くクイズをしたりする等、ナラティブ・アプローチを実践しています。これから、ナラティブの6つの観点「①ブルーナーのナラティブに対する考え方、②ブルーナーが言語獲得プログラムについて主張したこと、③ナラティブの特性、④ブルーナーがストーリーの解釈を深化させたこと、⑤語ることと聞くことの関連について、⑥教育におけるナラティブ」を述べていきます。ブルーナーは、「可能世界の心理」において、論理-科学的思考様式とナラティブ的思考様式があることを指摘し、ナラティブ的思考様式の研究をした人です。1つ目の観点は、ブルーナーのナラティブに対する考え方です。ナラティブについてブルーナーは、「文法の形式を習得する根源であると主張し、我々が生活する世界はナラティブのルールとその骨組みによって構成されることを提案(今井康晴,2010)」しました。私たちは生活のあらゆる場面で他者との関わりをもち、ナラティブを通じて言葉の使い方や文法の形式を習得していきます。子どもたちは新しい知識に対して不完全な理解にとどまっていますが、内省的介入、つまり、その内容について大人と対話を交わすことによって不完全な知識がまとまりのある知識へと変わり、より深い理解につながります。2つ目の観点として、今井(2010)は、ブルーナーが言語獲得プログラムについて主張したことを以下のように述べています。


   ブルーナーは、子どもたちの興味や注意が行為により支配されているこ

   と、そして風変わりな事柄への注意を集中し、その情報を処理するレディ

   ネスが早くから備わっていること、時系列を標準化した形で保持するこ

   と、全体的な音声により見通しをもつこと、これらの能力が物語的道具の

   使用によって、早期に豊富な装備をもたらすことを確信した。したがって

   経験を物語ることによって言語獲得プログラムの優先性と特性を確固たる

   ものにすることは、幼児においても可能であり、幼児が言語以前の早期か

   ら物語的意味へのレディネスを備えていることを主張した。(p.53)


今井(2010)は、経験を物語ることによって言語獲得に必要な装備を幼児期から備えることができるとブルーナーが主張したと述べています。つまり、情報処理能力はナラティブにより身に付くと言えます。ナラティブによって、初めはバラバラに考えていたことが次第に時間的・因果的に結び付いたり、複数の情報から必要な情報だけを選び出したり、状況を読み取ったりする等、身の回りにあるたくさんの情報を適切に処理することができるようになります。3つ目の観点として、今井(2010)は、ナラティブの特性を以下のように述べています。


   ナラティブの特性は、獲得した言語の使い方や、共同体での生活に必要な

   対人交渉の学習を通して身に付けられるもので、物語的文脈における規範

   や通常からの逸脱を説明する時に物語的説明が活性化すると考察した。ま

   た、物語における心的表象形式としての言語は、他者の行為や表現によっ

   て、また人が相互に干渉する社会的文脈によって引き起こされる生得的な

   表象として捉えた。(p.53)


今井(2010)は、ナラティブは言語の使い方や対人交渉の学習を通して身に付けられると述べています。4つ目の観点として、今井(2010)は、ブルーナーがストーリーの解釈を深化させたことを以下に述べています。


   ナラティブ的解釈では、「話し手」が「聞き手」に対して「語る」という

   行為が、ある事象の解釈による意味形成の重要な手段となり、文化で生活

   する人間の行為を規定するものとして提案された。その様式は上述した二

   つの思考様式における論理科学的とナラティブの相互作用に認められる。

   そしてブルーナーは、ナラティブにおける個別のストーリー(法廷、文

   学、自己(自伝))の分析や解釈に関する考察で「二重の景観(dual

   landscape)」を挙げ、ストーリーの解釈を深化させた。それは、展開され

   るストーリーの中で、作り手からみた視点の景色、ストーリーの主人公か

   らみた景色、その他の登場人物からみた景色との複雑な絡み合いを通し

   て、新たな世界観や解釈を導き出されることを提案した。(p.55)


今井(2010)は、語る行為は事象の解釈に重要な手段であり、自分以外の立場から見た景色を知ることで新たな世界観や解釈を手に入れることができるとブルーナーが提案したと述べています。つまり、対話は、別の人の解釈に触れたり、一見無関係に見えることをつなぎ合わせ新たな意味を生み出したりする手段となり、対話をすることで他者の考え方を自分の既存の考え方に取り込み、新たな価値観や可能性を生み出していくことができると言えます。5つ目の観点は、語ることと聞くことの関連についてです。ブルーナーは、「科学を創造する過程の一つとしてナラティブを認識し、ナラティブに含まれる一連のストーリーは解釈の循環によって意味付けられることを主張した。そしてストーリーは説明されるものではなく解釈されるものとして扱い、ナラティブとストーリーの典型(今井,2010)」としました。語ることは人の話が理解できるようになることと言うことができます。語る時には、言いたいことの要点を選び、順序立てて話すために頭の中で整理することが必要になります。これができるようになると、人の話の要点も分かるようになり、話を聞いて理解することができるようになります。6つ目の観点は、教育におけるナラティブについてです。「教育におけるナラティブは、物語という表現形式で経験を表す能力として単純な子どもの遊びに留まるのではなく、文化の中で営まれる生活の大部分を支配する意味形成の手段として位置づけた(今井,2010)」とあることから、ナラティブは論理力を身に付けるだけでなく、ものの考え方・見方をも枠付けていくものと言えます。私たちは、ナラティブによって他者の考え方を取り入れて新たな視点から物事を考えられるようになり、社会的文脈によって形成され共有される意味を捉えることができるようになります。そして、ナラティブは自らの経験を枠付ける意味のまとまりとして機能し、私たちのその場の言動だけでなく、その先の言動をも方向づける重要な役割を果たします。ここまでナラティブの6つの観点を述べました。ナラティブは、日々の生活の中で様々な経験をし、その経験について対話することで身に付きます。帰りの会の発表において、本児童はまだこちらの意図を汲み取って答えることは難しいですが、心に残っていることを一生懸命話してくれます。新たなものの考え方や見方を獲得する一助となるよう、本児童の発表から伝えたかったことを汲み取り、新たな価値観を付加して言葉を返していきます。また、その他の場面でも出来事を共有して対話する機会を増やし、より上手に話すことができるよう支援していきます。

 以上、良い点及び今後の課題、運動遊びにおいて認知機能を要する運動の指標及び本児童の現状、想像力を生み出すナラティブ・アプローチについて述べました。ナラティブ・アプローチでは、新たに出会う知識に対する内省的介入を行うことで、新たな価値観や可能性を生み出すことができます。また、対話を通して、身の回りにある様々な情報を取捨選択したり、自己を取り巻く世界を捉えたりする力を身に付けることができます。その力は、未来の言動をも方向づける重要な役割を果たします。今後も、対話を通して様々な考え方を伝え、本児童がより楽しく過ごしながら、より成長できるよう支援していきます。


引用文献

今井康晴(2010).ブルーナーのナラティブ論に関する一考察.広島大学大学院教

   育学研究科紀要第一部学習開発関連領域.59.51-57.

Juri, F.

【SST】楽しい環境を通して成長を促す

2020-07-07

 本児童が通所し始めてから1年が経過しようとしています。ここまで様々な改善点が見られていますが、課題も未だ残されている状態です。本支援計画書では、はじめに最近の様子、次に自閉症児が学校で困り感を持つ理由とそれを改善する方法、続いて、ここまでに改善された点と今後の課題をお伝えします。

 最近の様子をお伝えします。6月から学校が始まったことによる環境の変化に伴い、少し落ち着きのない様子が見られています。新学期が始まり、新しい教室で、新しい先生、新しい友達と過ごすことになり、本児童を取り巻く物質的・人的環境が大きく変化しました。それにより不安定となった「環世界(Umwelt: Uexkull, & Kriszat, 1934)」(山内弥生・高橋登, 2013, p.118)が本児童にとって安定した環世界になるには、一定程度の時間経過が必要であると推測されます。不安定な時期は、一度できるようになったことができなくなってしまうこともありますが、成長過程の一つとして温かく見守っていきます。環世界の概念については「主体と環境が分離されるものではなく、主体は環境に常に包まれており、その環境自体が主体から見えて(あるいは感じられて)いるようなものとして存在していることをあらわす概念」と山内・高橋(2013)は述べています (p.118) 。 また、山内・高橋(2013)は 、自閉症児が学校で困り感を持つ理由を以下のように述べています。


   学校では、制度的な枠組みと子どもの障がいの双方のことから、自閉症児

   はさまざまな困難に直面せざるを得ない。学校で子ども達は集団の中で生

   活し、共通の目標の下で統一的な、つまり、みなが同じ行動を求められる

   ことが多い。他児との不断の関わりがあり、子どもは受動的に動くばかり

   でなく、能動的に対応することも求められる。また、他の児童との間で

   は、障がいに固有の仕方で独特な振る舞いをすることもあり、時には、そ

   れによって周囲の児童と同じ環境の中で活動できないことや、その行動が

   周囲を巻き込むトラブルに発展することもある。そうした点から、自閉症

   児の環世界は安定的なものとはなりにくい状況にあると考えられる。

   (p.118)


山内・高橋は、学校では自閉症児の環世界が安定的なものとなりにくい状況であることを説明しています。また、山内・高橋は「現在実践されている療育プログラムの多くは、それまでの行動療法的なアプローチとの対比から、発達的なアプローチ」であると紹介しています (p.117) 。そして、その内容は「コミュニケーションが自発的に促されるような環境ないし場面を用意し、子どもの方が相互行動を開始し、大人は子どものリードに従って、子どもの意図に反応し、子どもの行動を発展させるものとしてまとめること(Wetherby & Woods,2008)」と述べています (p.117) 。 この発達的アプローチは、私たちが実践する楽しい環境を提供することによって子どもの自発的な行動を促す療育方針と相通ずる内容です。引き続き本児童の成長を促進させるために発達的なアプローチを実践していきます。また、楽しい環境とは、本児童に合ったものでなければならず、本児童の気持ちを汲み取る努力をしていきます。

 続いて、ここまでに改善した点及び今後の課題をお伝えします。運動遊び・戸外活動・学習・帰りの会・自由遊びの5つの場面に分けてお伝えします。なお、同じ行動が複数の場面で見られることもあり、内容が重複している場合もあります。

 まず、運動遊びでの状態をお伝えします。運動遊びの始めと終わりの整列では、切り替えが苦手なこと・指示が聞こえていないことから、フラフラしていてなかなか自分の場所に並ぶことができませんでした。また、並んだ後に友達の背中をつつく等のちょっかいをかけることもよくありました。しかし、最近は並ぶまでの時間は掛かるものの友達にちょっかいをかけることはなくなり、整列係の指示に従えるようになりました。また、終わりの整列は比較的早く並ぶことができるようになっています。整列後のあいさつでは寝転がってしまうことが多く、よく声を掛けられています。以前は声を掛けられてもなかなか正すことができませんでしたが、最近はすぐに座ってくれるようになりました。あいさつをする係を頼まれた時は自ら正すことができています。実技に取り組む時間は、初めの頃はやりたがらず、寝転がったり立ち歩きをしたりして過ごしていました。しかし、取り組んでみると意外とできることに気付いて自信をもち、集団遊びや得意なことに積極的に取り組むようになりました。集団遊びでは、「鬼をやりたい」等の意思表示も自ら示すようになりました。その際、「ハイハイと言わず静かに座って待っていたら鬼になれるよ」等の声掛けにより、どうすればよいかを理解し、行動に移すことができるようになりました。まだ足じゃんけんや短縄等、得意でない種目はあまり取り組もうとしませんが、全体的に参加の機会は増えています。他の子が取り組んでいる時に座って待つことは依然として難しく、自分の番でない時は寝転がっています。しかし、「座っていたら(次の運動が)できるよ」と前向きな声掛けを行うと、運動の好きな本児童は素直に聞き入れ、短時間であれば座って待つことができるようになりました。まだ長続きはしませんが、「やりたい」という前向きな気持ちが適切な行動に結びついている一例です。集団遊びで負けてしまった時は悔しくて涙を浮かべながら「〇〇は悪い子だ」と言って別の部屋へ行ってしまうことがあり、気持ちを切り替えるまでに時間がかかっていました。しかし、最近は、不適切な発言は出てしまいますが、別の部屋へ行こうとした時に席に戻るよう声を掛けると、自分の席へ戻ることができるようになりました。運動遊びは本児童が好きな活動であり、前向きに取り組むことができています。多少課題は残っているものの、全体的に改善傾向にあります。

 次に、戸外活動での状態をお伝えします。戸外活動では、興味をひかれるとペアの子をおいて一人で別の所へ行ってしまったり、遊具のない広場では遊べずベンチにずっと座っていたりすることがありました。しかし、ペア活動に取り組む中で、「〇〇ちゃん、あっち行こう」等の呼び掛けができるようになり、一人でどこかへ行ってしまうことはなくなりました。また、指導員が見守る中で友達と関わる機会を設定したことで、友達と仲良くするためにルールを守ることを覚えたり、友達と一緒に遊ぶことの楽しさを感じたりできるようになりました。友達との関わりを自ら求めるようになってから、遊具のない広場でも鬼ごっこや野球、サッカーをして楽しそうに過ごすことが増えました。戸外活動では、ペア活動により指導員が仲介しながら友達と関わる機会を設けてきたことから、友達との関わり方を覚え、ルールに沿って楽しく活動することができるようになりました。

 続いて、学習の時間での状態をお伝えします。学習はなかなか取り組む気になれず、始めるまでにとても時間がかかり、床に寝転がるといった逃避行動も見られます。また、私語が多く、友達に「静かにして」と言われる等、友達とトラブルになることがあります。宿題や公文をやるよう声を掛けると指導員に対し「お前がやれ」等の不適切発言をし、反抗的な態度を示します。休校期間中はその日の課題を終えられるようがんばる姿が見られましたが、休校明けは机に向かうことができず終わらないことが続きました。ここ数日は、始めるまでに時間はかかるものの、時間内に終えられるようになりました。一旦取り組み始めるとスムーズにできるので、いかにやる気になってもらうかが現在の課題です。

 続いて、帰りの会での状態をお伝えします。帰りの会では、初めて知ったことや楽しかったことの発表をしてもらっています。初めは「言えない」と言うことがよくありましたが、経験を重ねるうちに「いつ」「どこで」「何をした」という型に沿って上手に言うことができるようになりました。他の子の発表中に寝転がって聞いていないときもありますが、ルールを伝えると、短時間であれば意識して抑えることができています。まだ長続きはしませんが、本児童も得意な活動として認識しており、言いたいという気持ちがあることから、ルールを守ることにつながっています。運動遊びと同様、発表もがんばろうという意欲が感じられ、良い傾向にあります。

 最後に、自由遊びでの状態をお伝えします。通所し始めた頃は、一人で遊んでいました。次第に、指導員と関わるようになりました。そして、指導員とのメリーゴーランドやお馬さん、ロボット(指導員の足の上に本児童に立ってもらい、一緒に歩く)といった触れ合う遊びを気に入るようになり、本児童から「やってやって」「もう一回」と言いに来てくれるようになりました。この頃から、私たちとの関わりは楽しいものだという認識ができてきたと推察されます。友達との関わりは、初めは友達の作った物を壊す等の不適切な行動がよく見られました。謝るよう促しても謝ることもできませんでした。次第に、同学年の友達に本児童がちょっかいをかけにいくと、その子が相手になってくれるようになり、仲良くなりました。とても気の合う友達で、いつも一緒に遊んでいました。休校期間中には、年上の友達の名前をたくさん呼んで慕うようになり、ボール当てやじゃれ合い等をし、だんだん誰とでも仲良くできるようになりました。今では、不適切な行動で気を引こうとすることはなくなり、上手に関われるようになりました。また、友達に話しかける時に、友達の目をチラッと見る等、相手のことを意識できるようにもなりました。コミュニケーションの面では、本児童から指導員に話しかけてきてくれたり、友達に「ねぇ、見て」と作った物を見せに行ったりする等、積極的になりました。最近は、誕生日のこと等、自分のことを話してくれることも出てきています。自由遊びの場面では、友達との関わりを通して、相手を意識したり楽しさを共有したりする行動がとれるようになり、大きく改善しました。

 以上、これまでの様子を振り返ると、多くの点で成長したことが分かります。今後も楽しい環境を提供するとともに、本児童の特性を考慮し、本児童を取り巻く環世界が安定したものとなるようサポートしていきます。


引用文献

山内弥生・高橋登(2013).小学校入学にともなう自閉症児の学校環境への移行過

   程―短期縦断的分析―.大阪教育大学紀要第Ⅳ部門教育科学.62.117-

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Juri, F.